環境に優しいランジェリーブランドBasara
雑多な大須の商店街を抜けた路地裏にあるパリの田舎町を思わせる小さなショップが、今回のポップアップ会場です。
店内に入ると、カラフルなランジェリーの他に、上質な艶のシルクシャツやスラックス、シンプルなベビーロンパース、日常使いにも最適なニットなどが整然と陳列されており、ランジェリー好きにはたまらないワクワク空間が広がっていました。
筆者を出迎えてくれたのは、Basaraブランドディレクターであり現役スタイリストでもある村上さんと、デザインを担当するニューヨーク在住のデザイナーkimikonakayamaさん。共通の知人を通じて知り合ったというお二人がBasaraを立ち上げたのは約9年前。
モノづくりすることは、同時に責任を負うこと。
大手下着メーカーでは、型にはまった下着作りや大量生産しかできない。もっと自由で、もっと人にも環境にも優しい、ファッションとして楽しめる下着を作るにはどうしたよいか。そう考えた二人が出した答えが「シルク」でした。シルクは地球に優しい天然素材でもありながら、洗練された美しさと上品さを兼ね備えた唯一無二の素材。地球環境を守りつつ、「もう一度自分の美しさにウットリする」というBasaraのコンセプトを体現するには、シルク以外にあり得ない。
大量生産すれば商品が余る。商品を余らせたくない。ゴミを出したくない。地球環境を壊したくない。でも、大量生産しないと工場が取り合ってくれない。そんなジレンマに立ち向かうべく誕生したBasaraシルクランジェリー。ここからは、その魅力をたっぷりとご紹介していきましょう。
有名ブランドでも愛用される高品質なシルク生地
Basaraのランジェリーは、エルメスやクロエなどの一流ブランドでも愛用される最高級クラスのシルク生地を採用しています。それだけではなく、フランス最古のシルクファブリックメーカーPERRIN社のシルクサテン生地に、ロンドンでデザインされたテキスタイルを、イタリアの工場でプリントして、最終的に日本で縫製された贅沢なランジェリーなんです。
厚みがありながらも艶感と柔らかさに満ちたシルク生地には、伸縮性のあるポリウレタン(スパンデックス)が5%ブレンド配合されており、身体の動きにフィットしてくれるので、しなやかで自然な着用感が特徴。表地と同じシルク生地を裏地も使用しており、しかも縫い目が極力出ないように縫製されているため、肌触りも極上クラス。
ブラとショーツはセットでも楽しめるし、上下で異なる色を選んでもコーディネートとを楽しむこともできます。ブラジャーのサイズ展開は1~4となっており、ワイヤーが入っていないため適応サイズの幅が広いのも特徴です。フロントホックで着用もしやすい点も良いですね。
洗濯に強いのもBasaraの最上級シルクならでは。シルクといえばお手入れが大変なイメージがありますが、Basaraのシルク生地は洗濯機で洗うことができるそうです。もちろん手洗いがベターですが、日常的にお手入れが簡単なのは嬉しいですね。
ショーツはウエストのゴムが限りなくフラットに近くい仕上がりで、見た目の美しさと肌当たりの良さを両立。ゴムで締め付けず、滑るシルクの肌触りで、まるで履いていないかの様な優しい着用感です。
そしてこちらは、驚くほど軽い着け心地のワイヤーブラ。柔らかい樹脂ワイヤーを採用本当にワイヤー入ってる?と思うほどの軽さが特徴。バストを持ち上げて造形するという機能よりも、着けていないかのような軽い着け心地にこだわっているため、リラックスタイムにも良さそうでした。
こちらは大人用ではなく赤ちゃん用の下着「ロンパース」。シルクのロンパースは珍しく、ユニセックスなデザインなので、性別がわからない場合の出産祝いにも良いですね。
2ヶ月で80本販売!大人気のスラックス
Basaraの人気アイテムはランジェリーだけではありません。カラフルで目を引くこのスラックスこそが、Basaraの隠れたヒット商品なんだそうです。発売から2か月でなんと80本も販売したというから驚きです。
人気の理由は、やはり何と言ってもBasaraでしか実現しえないルックスと履き心地。肌に直接触れるという点では、スラックスもランジェリーと同じ。ゆえにデザインだけでなく履き心地が重要なのです。
天然繊維の中でも抜群の機能性を誇るシルクが吸収した汗を放湿する速さは、実にコットンの1.5倍と言われており、夏は涼しく、そして冬は暖かく、オールシーズン快適に履けるというわけです。さらに、シルクに含まれる保湿成分セリシンが、肌を保湿して乾燥から守ってくれるため、敏感肌の方からも喜ばれているそうです。
同素材、同デザインのシャツもあるので、パジャマとして使えば究極の極上のリラックスタイムを過ごせそうですね。
Basara姉妹ブランド“Nu”のシルクニット
今回のポップアップのもうひとつの目玉がこちら。20SSシーズンからスタートしたBasara姉妹ブランド"Nu"のシルクニットアイテムです。
100%シルク糸を、日本で古くから使用されている「吊り編み機」と呼ばれる織機で編み上げたニットは、縫い目を外に出さない「袋縫い」という製法を用いているため、筒状で縫い目がなく、もはや「第二の肌」と言っても良いほどストレスフリーな着用感。素肌に一枚で着ても快適です。
さらに驚いたのは、この製法で編むことのできるニット生地は、1日にわずか17メートルだということ。1時間に1メートルしか編むことが出来ず、職人の手で時間をかけてじっくりと編み上げられているのだとか。じっくりと風合いのある生地は、日本独自の技術でしか体現できないそうです。
細い糸を程よい厚さの風合いのある生地感で編んだNuのシルクニットは、経年劣化も少なくシンプルで飽きの来ないデザインなので、長く使える点も素晴らしいと思いました。
日本のシルク編み伝統技術を残すために
最後に、村上さんに今後の展望についてお伺いしました。
「家族を連れて秋田へ移住し、自社工場を作るつもりです。ゴミを出さないというのもBasara創業当初からのポリシーですが、自社工場ができれば、カスタムオーダーメイドにより在庫ロスを極限まで減らすことができます。とくかく製品を余らせたくないんです。」
さらに、村上さんはこう続けました。
秋田には古くから多くの縫製工場があり、Basaraが初めて契約した工場も秋田にあったそうですが、その工場も現在は廃業してしまい、伝統の縫製技術は失われつつあるのだとか。「メイドインジャパンの技術と美しさを後世に伝え、町に伝統産業を残していくこと。そのために、その町で自社工場を作り、技術者を育てていく。自分たちが伝えないとシルクがなくなる。それくらいの気持ちでやっています。」と村上さん。
秋田には縫製という文化が伝統として残っていますが、それが徐々に失われつつあります。縫製文化を後世に伝えていきたい。その為に今ある縫製の形を変えて新しい場所で表現したいと考えています。シルクを縫うということ自体、極めて高い技術が必要で、その街のその職人さんたちだからこそ実現できる美しさがあります。そんな美しいBasaraを続けていくことで、縫製の技術を継承していければと思っています。」
モノづくりすることは、同時に責任を負うこと。口で言うのは簡単ですが、それを実行するのは簡単なことではありません。それを有言実行しようと突き進むBasaraランジェリーの姿に、強く心を揺さぶられました。これからのBasaraの未来に期待は高まるばかりです。
今回のポップアップは、普段はNYで活動しているKimikoさんによるフィッティングのアシストを受けられたというだけでも貴重でしたが、Basaraに加えてNuもフルラインナップで見ることができ、さらに貴重なお話もたくさん聞かせていただき、とても有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました!