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上品でセクシーなランジェリーをデザインする-アルクァーテ鈴木緑さんインタビュー(前編)

TEXT / INTERVIEW / うめ組ランジェリー
DIRECTION / LINGERISTA編集部

上品でセクシーなランジェリーをデザインする-アルクァーテ鈴木緑さんインタビュー(前編)
「セクシーとは“上品さ”がないと成り立たない。そういう意味では、“いやらしさ”とは対極にあるもの」。そう話すのは、アルクァーテのオーナー兼デザイナーである鈴木緑さん。アルクァーテの上質な素材を使った軽やかなランジェリーと同様、緑さん自身も軽やかな気品、凛とした強さを感じさせる女性である。2016年にブランドをスタートし、今年で7年目を迎えたランジェリーブランド『Alquarte(アルクァーテ)』。普段はそんなに語ることはないという、デザインに込めたストーリーやこだわり、またブランド立ち上げにまつわる緑さん自身のストーリーについても伺った。

「ランジェリーを選ぶ楽しさ」を知った、中高生の頃

━━とにかくランジェリーが大好きで自身のブランドを立ち上げてしまった、というお話を過去のインタビューで拝見しました。ランジェリーを好きになったのはいつ頃でしたか?

母がランジェリーの販売員をしていたので、中高生ぐらいの頃から、母が持ち帰ってきたカタログを眺めて選んだりするのがすごく楽しみでした。早い頃から興味は持っていたのかな、と思います。

━━その頃からTバックが好きだった、というお話も。中高生からそういうランジェリーに触れていたというのは、かなり早い方なのかな?と思いました。

そうですね、母が下着を扱っていたので、単純にいろんなタイプがあるよ、ということで高校生ぐらいからかな?履くようになりましたね。偏見などはなかったです、色っぽいものやセクシーなもの、レース素材も昔から好きでした。

━━ランジェリー以外に、ファッションにも興味があったのですか?

元々ファッションが好きで、中学生ぐらいからファッションデザイナーになりたいな、という夢をずっと持っていました。コレクション雑誌を読んだり、シャネルが一般公開でショーを開催したときには母に連れて行ってもらって見に行ったりもしました。ショーはとても素敵で、カール・ラガーフェルド(当時のシャネルのデザイナー)に憧れてもいましたね。

パリで魅了された、シャンタルトーマスの世界観

ファッション業界を目指して芸大のファッション課へ進学したのですが、パリへ短期留学をした際、たまたま入ったランジェリーショップがシャンタルトーマスの本店でした。お店の雰囲気が本当に素敵で、「ランジェリーで、こんなにワクワク、キラキラした気持ちになる世界観があるんだ」と。

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━━お店の雰囲気は、日本のランジェリーショップとどのように違いましたか?

店舗の作り方、ランジェリーの置き方、魅せ方が全然違っていました。もちろん製品のデザインも。よりファッションに近い感じがとても素敵だなと思いましたね。

店内に男性が結構いたのも印象的でした。日本のランジェリーショップは女性のお客さんがメインで、いたとしても連れてこられた感がある男性や、申し訳なさそうにしている男性が多いイメージですが、パリではパートナーへのギフト用にランジェリーを買いにきている男性がたくさんいました。たしかバレンタインの時期だったので、店内に男性の方が多くなるぐらい。

男性が女性に対して、相手のことに興味を持ってランジェリーを贈るような文化が素敵だなあ、と。日本でも、男性がもっと気軽にランジェリーをプレゼントしてくれる環境ができるといいなとも思いました。

ランジェリーも、コミュニケーションツールだと思っています。贈ることで、「あなたのことを大事に思っているよ」「あなたにすごく興味がありますよ」といった意思表示になる。そういう会話、コミュニケーションの一つとしてランジェリーを贈って欲しいなという想いは昔から持っていますね。

━━パリでの経験が、ランジェリーデザイナーになると決めたきっかけになったのですね。

日本では同じような世界観を創り上げているお店はあまりなかったので、そこからインポートランジェリーにはまり、自分もそういうものを作りたいな、と思うようになりました。

パリでの学びを活かし、ランジェリーデザインを

━━パリの短期留学中にはどのようなことを学ばれたのですか?

パターンメイキングとドレーピング(立体裁断)を学んだのですが、フランス人の先生のやり方が、日本の考え方とまったく違ったのがおもしろかったです。日本だと、どちらかというとマニュアル通りにやるのですが、パリだと、例えばドレーピングで、偶然できたシワとかを「いいね、これを活かそう」となったりする。個々人のいいところをどんどん見つけて、広げていくような教え方をしてもらった気がします。より感覚的、理論的なものよりもフィーリングを大事にする感じでしょうか。

パリの短期留学中、ドレーピングの授業の様子。
パリの短期留学中、ドレーピングの授業の様子。

━━今のアルクァーテのランジェリーデザインにも生きている部分でしょうか?

そうですね。サンプルを作る際、ボディに布をあてたりしながら考えたりするのですが、偶然今ここに置いたこの角度、いいかも、とか。そういうのは楽しいですね。

3年越しで実現した独立

ブランドを立ち上げるにしても何をしたら良いか分からなかったので、一度企業に入ろうと思い、大学卒業後、名古屋の大手アパレル商社に入社しました。デザイナーとして3年弱働かせてもらい、その後独立しました。生産の流れや、仕様書の書き方から、工場での作り方や生地のことなど、会社員時代に学ばせてもらえたことはすごく大きいです。

3年で独立する、というのは初めから決めていました。実際は3年より少し早かったですが、もう勢いというか、あまり躊躇はなかったです。周りに経営者や、自分で何かやられている方も多かったので、そういう方に昔から「自分でやりたい」という話はしていました。なので、周りにも「いつやるの?」「早くやったら?」と急かされていたぐらいで(笑)。

━━昔から決めていた独立を実際にしてみて、何かギャップはありましたか?

会社員を経験してから立ち上げをしたので、お給料をもらっている立場と、自分で経営をするのとでは考え方が全く違うな、というのは独立してからやはり感じました。会社員というのはやはり恵まれていたんだなとか、会社の力ってすごいんだなと思いましたね。

━━いちばん大変だったことは?

やはり、いちばん初めに工場を探して、生産をしてもらうまでがいちばん大変でした。立ち上げたばかりのブランドでロットも少なく、資金にも限界がある中で、協力してくれる工場さんを探すというのは難しかったです。

プロモーションの仕方なども立ち上げ当初は全然知識がなかったので、知り合いのデザイナーに教えてもらったり、いろんな方を紹介してもらったり、なんとか少しずつブランドとして形になっていった感じです。

ブランドとして「続けること」の大切さ

━━これからブランド立ち上げをしたい、という方へ何かアドバイスはありますか?

途中でやめちゃダメだな、というのは何事にも思います。私はランジェリー以外にも他の仕事もいろいろしていたりするのですが、やっぱり続けた人が強い。

同じタイミングでブランド立ち上げたデザイナーさんも結構いたのですが、大体3年以内にやめてしまう人が多い。アパレルは実際にものを生産してお金が入ってくるまでのスパンが長いので、そこの資金繰りは大変です。

かつ、デザイナーだとやはり色々とやりたくなってしまうので、そうするとお金もその分かかってきて、続けていくのが難しくなってしまったりします。そこでもう、大変だから、と言ってやめてしまう人も多い印象です。

Alquarteの美しい素材
Alquarteの美しい素材

━━緑さんにとってアルクァーテとはどんな存在ですか?

自分の思いを表現する場、かな。ランジェリーを作っているというよりも、自分がいつも思っていること、今の自分の気持ちや皆に伝えたいことを、下着を通して発信しているという方が近いです。

今はこのような時代で、不安感が増している人は多いと思います。そのような時にあまりネガティブになりすぎないためにも、素敵なものや美しいものを見て気分を高めたり、自分に心地よい過ごし方をしていって欲しいな、とすごく思っていますね。

***

前編では、ブランド立ち上げに至るまでの緑さん自身のストーリーを中心にお届けした。ブランド立ち上げは「勢いで」と笑う一方で、小さな頃からのデザイナーになるという夢、独立への思いを着実に実現してきた、緑さんの芯の強さがひしひしと感じられた。

後編では、ランジェリーデザイナーとしてこだわっているモノづくり、自ら手がけるランジェリーを通して伝えたい思いなど、よりコアな部分に迫る。

Alquarte(アルクァーテ)

Alquarte(アルクァーテ)とはフランス語の[à la carte](アラカルト)とquartette(カルテット)を合わせた造語をブランド名に冠した日本生まれのランジェリーブランドです。デザイナーの Midori Suzukiが流行や型にとらわれるだけでなくランジェリーを自分の気分に合わせ気軽に・自由に楽しんでほしいという想いが込められています。フランス製レースや国産シルクなど上質な素材を使用し、日本国内で1点ずつ丁寧に作られています。

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